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医院名 |
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中澤小児科 |
院長 |
中澤 道人 |
住所 |
〒658-0047 兵庫県神戸市東灘区御影1丁目14-25-101号 |
診療科目 |
小児科 |
電話番号 |
078-856-6631 |
「どんな治療法があるの?」
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疑問に思う事、何でもご相談ください。
TEL 078-856-6631
『海外では私の知る限り、日本のように2回接種する国の事例はありません。」
と新潟大学小児科の斎藤教授
冒頭のサブタイトルは令和2年10月28日付の朝日新聞の記事「インフル予防接種1回?2回?」から 引用したものですが、日本のインフルエンザワクチンが国際的な量に変更されたのが、2011年ですから10年もの間、日本だけが12歳まで年2回ものインフルエンザワクチンの接種を続けていることが驚きです。
インフルエンザワクチンの2回接種が必要な年齢を比較してみると、
ある抗原刺激(この場合はインフルエンザワクチン接種)により一次免疫応答の成立する過程を基礎免疫といい、一度基礎免疫が成立すると次の抗原刺激(この場合はインフルエンザワクチン接種)により、一次免疫応答に比してより短時間で、より強い二次免疫応答が生じます。この二次免疫応答が一次免疫応答より、より強く、より速く起きることを電気の増幅回路(ブースター回路)になぞらえてブースター効果といい、この場合の二次刺激はワクチンの追加接種にあたります。
基礎免疫が成立すると、追加免疫は数年に1度で良いはずですが、インフルエンザウイルスの抗原性は 毎年のように変異する為、毎年、年1回の接種が必要となります。
そこでインフルエンザワクチンの基礎免疫の成立には、どれだけの回数のワクチン接種が必要かが問題です。
WHOは、当初アメリカと同様最初の年に2回接種すれば基礎免疫としては不完全でも、以後毎年追加接種を行うので、最初の年に2回接種すれば以後は毎年1回の接種で良いとしていましたが、0歳児と1歳児はインフルエンザウイルスに感染すると最も重症化し易く、ワクチンの効果が乏しいことから、年に2回の接種が必要で2歳から8歳の児では、最初の年に2回接種していれば、以後は毎年1回接種すればよいと変更になり、9歳以上では初めてインフルエンザワクチンを接種する場合でも年1回の接種でよいとしています。
しかし、ワクチンの専門家の中には、最初の年に2回接種するだけでは、インフルエンザワクチンに含まれる4つのインフルエンザウイルス(A 香港・A2009 パンデミック(A 新型)・Bビクトリア・B山形)すべてに基礎免疫は成立しないという意見も強くあります。
また、アメリカ小児科学会の2012年版のガイドラインでは、ワクチンの中のインフルエンザウイルスの株が変更になった場合には、年に2回の接種を推奨するという項目が追加されましたが、これに従えばワクチンの中の4つのインフルエンザウイルスのどれか少なくとも一つは毎年のように変更されていますので、2歳から8歳の児では毎年2回のワクチン接種が必須(should)ではないけれど、推奨される(recommended)ことになってしまいます。ところが2015版になるとこの項目は削除され、3価のワクチンで2回接種をしている場合には、4価のワクチンの2回接種を受けることを推奨するとなり、2018版にはこの項目も削除されました。
このような変遷があったことから、アメリカでも最初の年に2回するだけで基礎免疫が充分に成立しているのか、確信が得られていないように思われます。
そこで私達が提唱するのは
年に2回接種した年度の接種量の合計が2mlに達したら次の年から毎年1回の接種に移行
接種し忘れた年を挟んでも年1回の接種
これは2010年以前の日本独自の少ない接種量で接種を行っていた時に、最初の年だけしか2回 接種をしないアメリカの方式をこれでは基礎免疫は成立しないと批判していた複数のワクチンの権威が、6歳になったら年2回の接種は無意味としておりその時の接種量が1歳から5歳まで年に2回各0.2ml×2で5年間でこの間の接種量の合計が2ml
2010年までの日本の接種量 |
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6ヶ月~11ヶ月 0.1ml 1歳~5歳 0.2ml 6歳~12歳 0.3ml 13歳 0.5ml |
2011年以降のまでの日本の接種量 (国際的な摂取量) |
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3歳未満 0.25ml 3歳以上 0.5ml |
1回の接種量が0.25mlのB型肝炎ワクチンを1回目と2回目を4週間、1回目と3回目を20~24週間で接種するとワクチン不応者(non-responder:≦10mIU/ml)が 5~10%、感染防御に十分な抗体価(100mIU/ml)に達しないものが半数近く存在すると考えられていますので、0.25ml×3の接種では基礎免疫を成立させるのには十分でないと考えられます。(一方B型肝炎の潜伏期間が45日~160日、平均90日と非常に長い為に基礎免疫は不十分でも長い潜伏期間中に抗体価が上昇し、感染防御できるとも考えられ過去には追加接種が必要と考えられていたものが血液透析をしていない限り、追加接種が必要ないことになったのは同じ理由からです。)
根拠①~③から、接種量の合計0.75mlでは基礎免疫は十分に成立せず合計2mlが必要とし、根拠①よりそれ以上2回接種するのは不必要であると判断しました。
基礎免疫が成立した後も、インフルエンザワクチンの場合、毎年1回の接種が必要ですが、何らかの理由で接種しなかった年があった場合、翌年のワクチンの接種回数は1回なのでしょうか?それとも2回?冒頭の日本の専門家の発言では2回必要ととれますが、WHOもアメリカ小児科学会も接種しなかった年の次の年の接種回数については何も言及していません。
WHOの勧告の中に「6ヶ月から23ヶ月はワクチンの効果が乏しく感染すると重症化するので年2回の接種が必要だが、2歳から8歳では以前に(=previously)(年に2回)接種を受けたことがあるならば毎年1回の接種で良い。」とあるところをpreviouslyを前年度にと読み文脈より年に2回が省略されているのは明らかですが単に接種したことがあるならばと読んだ為なのか、または個人的な見解なのでしょう。
接種しなかった年の効果は落ちてもまた次の年に1回の接種を受ければ接種した年の効果は変わらないはずです。ですから接種しなかった年の次の年からも年1回の接種で良いことになります。
効果は年によって変わりよく効く年もあれば効かない年もあります。ワクチンに使われるインフルエンザウイルスの株は、WHOが推奨するその年の流行株だけでは大量に作れないので卵で非常に早く増殖で きるインフルエンザウイルス株と掛け合わせて、そのハイブリッド株(遺伝子再集合株)を作りそれを卵で増殖させるのですが、その過程でアミノ基配列に変化が起きることがあり、父親たるWHO推奨株の性格がかなり失われる場合がありその場合はその年度のワクチンの有効性は低くなります。
アメリカでは小児における有効率は50~95%とされています。
新型コロナウイルス禍で、インフルエンザウイルスワクチン不足が懸念される中で
これらのことが新聞やテレビで報道され多くの人が知るところとなりました。
不思議なのはなぜワクチンの接種量が国際的な量に変更された2011年にこのような議論が起きなかったのでしょうか。
10年もの間、国際的に、また学問的に必要ないとされる2回目のインフルエンザワクチンを接種し続けたのは医療機関や製薬業界への影響を配慮してのことだと思われますがだからと言って不必要な苦痛を小さなこども達に与えることへの正当化ができる訳でもありません。
近い将来、日本もアメリカと同様最初の年だけ2回接種へと変わるものと思いますが、それでも私達は2回接種した年の接種量の合計が2mlに達するまでは2回接種を勧めるというポリシーを変えるつもりはありません。